マンション管理組合の一大イベントとして管理組合の総会開催が挙げられます。
その総会では、次期理事会の役員候補の議案について審議し役員が選出されます。
役員候補の選出にあたっては、多くの管理組合が輪番制としていますが、高経年マンションとなると、高齢者や賃貸住戸の増加などで役員の担い手確保に苦心する管理組合が少なくありません。初めて就任する役員には、今までマンション管理等に関心が無く、マンション管理・運営の知識を持ちえない方が就任することもあります。理事会の運営は、総会決議等に基づき、マンション管理を具体的にどのように進めていくかを決定し執行する機関であり、より良いマンションライフを創造するうえで重要な役割を担っております。マンションは、利便性・居住性に優れていますが、いろんな価値観をもった人たちが居住しますので、マンション管理に関する問題・課題等もさまざまです。理事会役員としては、直面する問題・課題等への対処方法等について、上手に対応できるか否か不安や悩みは尽きないものです。このため、理事会役員には、少なくともマンション管理・運営に関する以下の基本的な事柄を理解しておくべきと考えます。
1.マンション管理に関する法律等
昭和37年に分譲マンションなどの区分所有建物に関する権利関係や管理運営について定めた「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)が、民法の特別法として制定されました。その後、分譲マンションの急速な普及に伴って、分譲マンションの管理運営に関するトラブル等や、阪神・淡路大震災において被災マンションの建て替えが課題となったこと、老朽化したマンションの建て替えや大規模修繕を円滑に行なう必要が生じたこと等から幾度か改正されています。
また、平成12年に多数の区分所有者が居住するマンションの重要性が増大し、区分所有法だけでは対応できない問題が生じたため、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」(マンション管理適正化法)が制定されました。この法律により、管理組合をサポートする国家資格として「マンション管理士」制度の創設及びマンション管理業者(管理会社)の登録、管理業務主任者の設置等が図られました。
現在、区分所有者等が遵守しなければならない法律、規約等の枠組は、民法、区分所有法、マンション管理規約、使用細則等が挙げられます。管理組合の管理・運営に関する枠組みは、マンション管理適正化法に則り、国土交通省にて「マンション標準管理規約」、「長期修繕計画作成のガイドライン」、「マンション標準管理委託契約書」等を公表しており、管理組合において管理規約の改訂、長期修繕計画の見直、管理会社との管理委託契約締結等で活用できます。また、マンション管理・運営についての専門家である「マンション管理士」の助言、指導、援助を活用する方法もあります。
2. 理事会の運営について
管理組合総会で、役員が選出されますと、早々に第1回目の理事会を開催します。主な内容は、役職の決定(理事長、副理事長、会計担当理事、部会理事)、前期からの引継ぎの確認(特に懸案事項については念入りに引継ぎ)、事業計画・事業予算の確認(この1年で何をするか、スケジュール化)、建物・設備等の視察などが挙げられます。初対面の役員には、お互いに知り合う機会を持つことを推奨します。
次に、定期的な理事会では、理事長が議長となり、各担当理事からの月次報告の確認、実施した業務の報告・実施予定業務の説明、窓口業務報告等があります。また、理事会承認事項として、専有部分のリフォーム申請、トラブル対応検討などの審議及び管理会社等による建物・設備点検等報告(日常点検・日常清掃、定期点検・定期清掃等)、管理費等滞納者の把握・対処方法検討などの審議を行うこととなります。その他、理事会役員の業務としては、名簿管理(区分所有者、居住者等)、修繕履歴の管理、設計図書や書類の管理、広報活動等があり、誠実にその職務を遂行しなければなりません。
最後に、管理組合の一大イベントである総会開催に向けた議案書の作成が挙げられます。先ずは、前期の事業報告書(事業計画に基づいた事業の実施について報告書としてまとめ)、会計報告書(収支計算書・貸借対照表・財産目録等)を作成して議案書とします。各報告書については、監事に業務監査・会計監査を依頼し監査報告書に署名押印を受ける必要があります。次に、次期の事業計画及び収支予算を検討します。事業計画書案・収支予算書案作成に当たり、当該年度固有の計画や予算があれば、専門委員会等の意見を参考にして作成し議案書とします。次期理事会役員候補の選出に関しては、管理規約に定められた定数を、「役員候補者選出細則」等に従って候補者を選出し議案書とします。
各議案書については、理事会にて審議し承認されて総会に付議されることとなります。総会にて議案書を審議し承認されれば、前期役員から次期役員への引継ぎ(特に懸案事項については念入りに引継ぎ)を行うことで理事会役員の任期が満了します。
以上のとおり、マンション管理組合の理事会運営に関する基本的な事柄について記述しましたので、理事会役員に就任して何を行うのかが大枠でご理解していただけたかと考えます。
理事会運営は、それぞれの役員が役割を十分理解し、協働・協調の精神に基づき自由で闊達な意見等を言い合える理事会とすることが求められます。直面する問題・課題に関して最善の対処策を的確な時期に円滑に提示・広報することが求められ、その手助けとなるのが管理会社です。管理会社とは、あくまでも対等な立場でのコミュニケーションに心がけ、相互間の信頼関係を構築するなど上手に付合うことが肝要です。しかし、全ての管理会社が要求に応えられるとは限らず、知らずに理事会役員が、管理委託契約に逸脱した無理な要求等行っているケースも散見されます。このため、マンション管理・運営の専門家であり管理組合と管理会社との中立的な立場にある「マンション管理士」を活用することで、3者による無理のないより良い理事会運営が可能となります。また、マンション管理士は、理事会役員に寄り添った助言・指導及び援助を行いますので、理事会役員としての不安や悩みが払拭でき、安心して管理組合役員を務めあげることができます。その結果、管理組合に貢献でき、将来のマンションライフが展望できるなど、役員に就任して良かったと思えることとなるでしょう。