分譲マンションの管理組合は区分所有者の組織であり、管理会社は管理組合からの発注を受けて管理委託契約書を締結し管理業務を行う受託業者です。マンション管理業務の運用にあたり、利益が一致することもあれば、反することもあるのはむしろ当然のことです。
一昔前は、管理組合が管理会社を選ぶ時代で、管理組合が複数の管理会社から提案・見積を徴収し一社と契約を締結するリプレースが行われておりました。しかし、昨今では、管理員・清掃員募集に際して、働き方改革にて退職年齢が上がったこともあり応募が少なく、フロントマン等の就労不足・離職等も相まって人材確保に苦慮する情勢となり、管理委託契約が維持できず、結果として管理会社が管理組合を選ぶ時代になりつつあります。
この様な環境のなか、管理会社と上手に付き合うためには、管理委託に関する「指示系統」を確立し、責任の所在を明確にしておくことが重要となります。そのためには、管理委託契約締結に際して、前期と同内容で了とせず、契約書の条項を注視し、業務項目、業務範囲、点検項目・回数等を精査し互いに行き違いが無いよう納得した書類にて締結することが求められます。更に、常に「性悪説」に立った視点で管理会社を見るのではなく、よきパートナーとして信頼を寄せることが良好なマンション管理・運営につながると確信します。
国土交通省では、マンション管理適正化法等の改正、担い手確保・働き方改革、居住者の高齢化・感染症のまん延等、近年のマンション管理業を取り巻く環境の変化を踏まえ、令和5年9月に「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」を改訂しました。
改定の概要は、「書面の電子化及びIT総会・理事会等DXへの対応」、「担い手確保・働き方改革に関する対応」(カスタマーハラスメント、管理員・清掃員の休憩取得等)、「マンション管理業の事業環境の変化(居住者の高齢化、感染症のまん延等)への対応」等が挙げられます。
多くの管理組合の役員は輪番制で就任し多くの役員がマンション管理・運営についての専門知識を持っていません。ましてや、管理委託契約書等は、毎年の契約更新時の重要事項説明で知り得た情報程度です。管理会社との管理委託契約書締結に際しては、少なからずとも、国土交通省の「マンション標準管理委託契約書」及び「マンション標準管理委託契約書コメント」についての知識が求められます。このため、マンション管理・運営についての専門家である「マンション管理士」の助言、指導、援助を活用することが、管理会社と上手に付き合う近道と考えられます。